『着物お見立て会』でお着物が蘇りました! 『蘇活継承』の始まりです

お母様の残された着物を、ご実家から持って来られての相談でした。

せっかく遺してくれた着物なので、着れたらいいな!となんとなく持ち帰っていた着物2枚と帯、帯締め、帯あげでした。

着物整理帖を元にお着物がどんな着物で、それが実際活かせるかどうか!?見立てて差し上げました。

お持ちいただいた着物2枚を拝見しました。

まず一枚目は最後にお着付けして差し上げた着物です。(下の方に写真あり) 柄いき、模様付けは絵羽模様で訪問着といったところでしたが、一点気になるところもありました。訪問着の一番特徴的な左襟と、肩との繋がりが見られないというところでした。

現在は、付下げ訪問着というジャンルもあります。制作過程が訪問着と付下げでは違ってきますが、着物の豪華さなどあまり差がなかったりします。

結論としては、付下げ訪問着ではありますけれど、訪問着と同じように、お子様の卒業式、入学式用に活用できる着物です。

お持ちになったなったお着物を拝見しています。

上記写真:2枚目は3つ紋入り色留袖です。家紋3つというのは、第一礼装の5つ紋に比べると、ちょっと格は落ちてきます。

逆に5つ紋だと結婚式などの時以外では、堅苦しくなってしまいます。そんな時、3つ紋や1つ紋にしておくことで、ちょっとした改まった席、例えばお茶会とか、結婚前の顔合わせなどの時、訪問着と同じような感覚(でもちょっと改まって)でお召いただけます。

着用範囲が広く、重宝できる一枚となります。

着物のプロフィールを一枚ずつページに書き留めて行きます

着物の名称:色留袖3つ紋入り 付下げ訪問着(友禅染)

購入時期:お母様が〇歳の頃 ?

購入価格:多分資料として残っていなければ、わからないことですので空欄です。

着物寸法:身丈/ 袖丈 / 前幅 / 後幅 / 裄 /肩幅 / 袖幅・・最低このくらいの寸法が分かれば、手元の着物が自分にそのまま着れるかどうかの判断がつきます。

実際の着物をメジャーで測って差し上げたのを、記入してもらいます。

思い出の記入欄には、お母様がお召になられていた記憶があれば、記入していただきます。「母がお茶席で愛用していたような気がする」などでも

その下、コーディネートの欄です。

着物のページに(No.1)・(No.2)とナンバーを入れます。

帯のページにも同じく(No.1)と入れて行きます。

着物のページには帯のナンバーを記入します。(帯揚げ・小物・コートなどがあればそちらのページのナンバーも記入します。)

着物を着た日も覚書で書き込んで行きます。

最後のスペースは、お手入れの覚書です。

出した月日、どんなお手入れ(丸洗い・洗い張り・お仕立て直しなど)お店の名前・受け取った月日・かかった金額

上2枚が着物プロフィールページです。下グリーン枠が帯のプロフィールページです。

帯も同じように記入します

帯の種類:袋帯 (略礼装用)六通柄・・(全通・六通・ポイント柄などがあります。格上の袋帯は全通/六通柄がほとんどです)

着物の場合と同じように見立てて行きます。

帯のサイズは長さを測ります。帯の長さで、結ぶ時の柄いきの合わせ方が違ったりしますので、分かっている方が便利です。

着物が終わった後、帯を見て差し上げました

着物と帯を写真にとってその場でプリントアウトしました。2枚ずつです。

整理が終わった後で、お着付けして差し上げました。

実は着物には、お母様がお仕立てされた時の寸法の一覧表(手書きのもの)が一緒に残されていました。

それを拝見した時に、娘さんとの身長の差が10cmほどもあることに気が付きました。

確認すると、「そう、母は私より小さい人でした」とのこと。

そうすると、多分洗い張りしてお仕立て直ししなければ着れないのでは?

そう思いながら、作業を進めて行きました。

一応、念のために寸法測りましょう!と言って、測っていくと、何と書いてあったサイズと違うではありませんか?

身丈(身丈・・着物の長さ)のみ、10cmくらい長いではありませんか?

これであれば、ぎりぎり着れるかも、と期待しながらお着せして行きました。

【これはお母様がお作りになる時、娘さんたちの事を考えて、大きめ(長さ)に作られていたのでしょう。 お母様の思いが伝わるお着物でした】

なんだか温かい気持ちになりますね。

ご覧の通り綺麗にお着付けできました。

実は、袖丈もお母様の身長に合わせて少し短いです。

裄も肩幅、袖幅やはり少し短いです。

身幅も細かったお母様より少しふくよかな分、狭いです。

でも、写真を見ていただいての通り、おかしなところはありません。

もちろん袖が短い時の所作、腕の動かし方などもお伝えしました。

お端折りはギリギリです。お着付けする時のポイントをお話ししました。

そんなことも含めて、お着付けはご自分でおやりになるのであれば、何度も練習してくださいね。

できないところ、難しいところが出てきたら、またお力になります、と伝えました。

「母の着物で、子供の卒業式に出ることが出来る」と分かって本当に嬉しいです。と感激されていました。

出来れば、この着物を着倒す覚悟で、着て行きます。との感想です。

きっとお母様もあの世で喜んでいらっしゃることと思います。

最後に、先ほど撮った写真を、着物整理帖のプロフィールページに差し込みます。 もう一枚は着物を仕舞ったたとう紙の上に入れて行きます。(差し込む袋を貼って差し上げています)

プロフィールページで着物を確認して、箪笥を開けた時、たとう紙の上の写真で確認して取り出すことができます。

上の段 着物が包まれたたとう紙・・中の着物や帯の写真が見えます。下の段 左着物整理帖見開きの表紙/プロフィールページ着物2枚/帯プロフィール写真

ここに至るまでの過程

オンラインの着物セミナーにご参加いただいていた方です。

パソコンの画面越しに着物講座をやりながら、拝見してみてあげていました。

ただ実際にこの着物が着れるかどうか?というところは、対面でお着物拝見した方が確実ということで、今回のお見立て会に参加いただきました。

オンラインセミナーでは、着物の良さ、着物の特徴、その他のことを5回にわたって、参加され勉強されていました。

今回は、その知識の上で、さらに必要な知識のおさらいと、個別の知識を授けました。

『蘇活継承』着物が蘇って、活用され、継承していく。まさにそのことが証明された出来事でした。SDGsそのものです。